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FP2級(実技)、受けてきました

 1月28日の日曜日、FPことファイナンシャル・プランニング技能士の試験を受けてきました。この試験、1級から3級までの格があり、それぞれ学科試験と実技試験とに分かれています。昨年5月に2級を受けたものの、実技が若干の点数不足で合格できませんでした。そのまま放り投げてしまったのですが、その後「ちょっともったいないかも」という気がしてきまして、今回の受験となったわけです。
 既に学科は終わっているので、今回は実技だけ。といっても別に模擬顧客相談などがあるわけではなく、ペーパーテストです。主に選択式で、短文の正誤とか、選択肢から一つ選ぶといったもの。計算問題も、いくつかは直接数字で回答するのですが、多くの問題が「正しい計算結果を選べ」というスタイルになっています。
 で、いわゆる「手応え」ということでいうと、残念ながら感じることができませんでした。むしろ肌感覚的には前より悪くなっている感じすらします。このまま“お祈り”されてしまう可能性も低くないわけですが、当ブログの「お知らせ」に「FP2級、不合格でした!」なんて高らかに書くわけにもいかないので、結果の出ていない現段階でブログネタにしてしまいたいと思います。


 さて、今回の残念感の正体、ずばり言うと「時間切れ」です。前回は、試験終了10分前のアナウンスを聞いて愕然とするレベルの時間切れだったのですが、それを大いに反省して臨んだ今回も、結局最後に手つかずの計算問題を1つ残したままで終わってしまったのです。
 冷静に考えてみると、この試験の問題数はかなり多いです。90分で40問と、1問あたり2分少々しかありません。しかも、一つ一つの設問形式が時間のかかるものとなっています。計算問題なら当然ですが、正誤問題であっても例外ではないのです。例えば1問の中に、4つの短文がある場合。これが「正しいのはどれか」なら、場合によっては1つ目で正解にたどり着けますし、確信が持てない場合でも、明らかに間違っている選択肢を除外した上で“もっともらしさ”を比較して選んでいくようなこともできます。ところが、多くの問題が個々に正誤を回答させる方式です。4つとも正答できないと点にならない以上、ざっと読み流すわけには行きません。でも細かな知識の一つ一つまで憶えているはずもなく、「あれ、この場合、どうだっけ…」と悩み、あれこれと考えているうちにどんどん時間は流れていってしまうのです。
 このあたりから、主催者側が受験者に望んでいる人物像というのも見えてきますね。ずばり「それ専門の勉強をみっちりしている人」です。受験専門テクニックや語呂合わせを叩き込んだ上で過去問や想定問題集をたっぷりこなし、あらゆる問題に対して脊髄反射レベルで回答できるような人間……ということです。「分野の基礎はできているので、初見の問題もその場で考えて正解にたどり着ける」だの「暗記は嫌いなので、推理力や応用力でカバーする」なんてこと言ってるやつは、全くお呼びでないのです。


 特にその感を強く受けたのが、とある計算問題でした。
 FP試験に必ず出てくる(&それ以外では見たことも聞いたこともない)「6つの係数」というものがあります。終価係数・年金現価係数・減債基金係数……などで、複利で資産運用をする場合の計算に使うものです。それぞれ一覧表の形をとっており、例えばx円を毎年金利y%で複利運用した場合z年後にはいくらになっているか…といった計算を、早見表的に行うことができます。
 でも、なんでこんなものが必要なのでしょうか。複利計算なんてのは、普通の電卓でも簡単に答えが出ます。逆演算になると結構複雑になりますが、それでも理解しておくべきはむしろ電卓の使い方でしょう。そもそも、6つの係数なんてのは混乱の素でしかありません(なにしろ、使うべき係数を間違えたら即死!)し、そもそもこんな日常生活とも実務とも100%無縁な言葉を憶えること自体が、結構な苦痛なのです。なので、賢い方法は、まず係数など放っておいて答えを出してから、電卓が出した答えに近い選択肢を選ぶというものでしょう。
 ところが、今回の出題スタイルは、わざわざそれを封じるような形で出てきました。というのも「係数を適用した結果の数値」を数字で回答しなければならないものだったからです。電卓を使ってしまうと、係数表では丸め誤差として切り捨てられる部分も含めて数字が出てきてしまうため(より正しいのにも関わらず)不正解となってしまいます。結局、電卓で答えを求め、さらにその結果に近い係数がどれかを見つけた上でもう一度係数を使った計算を行うという、回りくどい方法で回答するしかありませんでした。
 「大事なのは、正解を求めることじゃない。
  係数の名前と定義をきちんと憶えることの方なんだ!
 こんな主催者の断固たる意思を感じたのです。


 FP試験で扱っている内容は、士業にとって、とても重要です。
 2023年は行政書士会の無料相談会に積極的に参加しましたが、そこで寄せられるご相談のほとんどは、相続関係でした。このとき、続いてほぼ必ず質問されるのが、税金です。相続税はどうかかるのか、贈与税の仕組みはどうなのか…など、説明すればさらに掘り下げて質問されます。これに対して「あ、それは税理士に聞いて下さい」なんて答えていたら、顧客にはなってもらえませんね。具体的な相談に応じたのでは税理士法違反になってしまいますが、最低限のことはきちんと説明できる必要があるのです。そして登記とか保険とか、そういう対象は枚挙に暇がありません。
 士業の所掌範囲は、所管する官庁ごとに縦割り的に分かれていますが、顧客の知りたいこと/やらなければいけないことは、そうではありません。対応する能力が士業の国家試験だけで担保できない以上、こういう横割り型の試験の存在意義は、とても大きいものだと言えるでしょう。
 とはいえ、FP試験で得られる肩書が、単体で職業に直結するような資格でないこともまた事実です。「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」という名称を独占的に名乗れることになっていますが、そういう看板を掲げた事務所というのを、ぼくは一度も見たことがありません。資格試験と称しているものの、現実的には、簿記や英検のような検定試験に近いものだといえるでしょう。このサイト上のプロフィール欄には、二種類の学位と並んで「知的財産アナリスト」とありますが、合格したあかつきにはそこに付け加えられるというところでしょうか。ただ、そういう使い方をするにしても、どうにも収まりの悪い名前であることは否めないのですが。
 そんなわけで、合否のいかんに関わらず、FP受験はこれで終わりにしたいと考えています。落ちていればそれまでですし、合格していたとしても「今度はもっと上」なんてことはしません。試験では通用しない「エッセンスは理解している」も、実務では必要十分です。今回の受験用に作ったサブノートも、まずまず便利なものなので、今後の相談業務でも活用していきたいと思います。
 まあ、落ちてからこういうこと言うと負け惜しみに聞こえてしまうんですが、まだ合否決定前なので、ギリOKですよね!