3.2 家族関係法務(相続・遺言・家族信託)

 相続は、誰にでも必ずやってくる問題です。親が健在ならいつかは自分が相続人になりますし、そうでない場合も自分が次の代に財産を残す番が必ずやってきます。
 一方で、その相続の直前にある問題にも、目をつぶることはできません。特に社会的にも大きな問題となりつつあるのが、認知症です。単に認知症になったというだけでは法的な保護は得られず、不当な契約を結ばされ、財産を大きく損ねてしまうリスクがあります。その一方で、銀行口座が封鎖されてしまうことがあり、こうなると日常生活にも困ります。これらの決め手となるはずだった成年後見制度は行き詰まり、それに代わる制度は現れていません。
 家族関係法務は多岐にわたるものですが、当面の大きな問題はこのあたりにあると言えるでしょう。「国民の権利利益の実現に資する」ことを任務とする行政書士として、当事務所も積極的に取り組んでいきます。

遺言

 故人の財産を巡って残された遺族が争うことを言い表す「争続」という言葉があります。悲しいことに、ここ数年の間にすっかり定着してしまいました。
 相続では、故人の意思が最優先されます。つまりは遺言書で、これがあれば争続の問題はかなり回避できます。ところが、これを書き残していく人が、実際にはとても少ないのです。法務省の調査によると、遺言書を書いたことのある人は全体の7%未満。年代が上がれば比率も高まるのですが、それでも10%に届くのは、75歳以上の区分だけです。逆に言えば、9割近くの高齢者が、遺言を作成していないというのが現実です。
 遺言には、実質的に3通りの方法があります。(1)単独で作成する自筆証書遺言、(2)それを法務局で保管してもらう法務局保管自筆証書遺言、(3)そして公証人に口述筆記で作ってもらう公正証書遺言です。当事務所では、単に書き方をアドバイスするだけでなく、文面についてもフォローしていきます。また、2や3での、実際の提出や作成のための送迎などでも、お手伝いをしていきます。

家族信託の組成

 信託は、自分の財産を他人に預けて運用してもらう制度で、信託法という法律によって規定されています。市中には信託銀行も多数あり、また投資信託などもよく話題になるため、この言葉自体はなじみのあるものでしょう。それら、会社がビジネスとして運営している信託を「商事信託」といい、信託業法によって規制されています。一方、非営利で行われる「民事信託」というものもあります。通常、家族が受託者(財産を預けられる人)になることから、「家族信託」という名前が使われています。
 家族信託は、とても優秀な制度です。相続はもちろん、認知症対策や事業承継までをカバーできるのです。さらにはお一人様や非婚カップル、また自分の死後取り残されるペットのことが気がかりな人まで、幅広く対応できます。
 家族信託は、契約によって組成します。ただ、当然ながら契約書さえ書けばOKというものではなく、委託者(財産を預ける人)の意向についてじゅうぶんなヒアリングをしなければいけません。また、信託口口座の開設や名義の変更など、前後して発生する手続きも膨大です。家族信託の組成については、コンサルティング案件としての包括的な料金設定となりますが、「必要十分な法務サービスをリーズナブルに」という当事務所の基本コンセプトを維持していく所存です。

非富裕層のために

 相続の話題について、「自分は富裕層ではないから」と、無関心になってしまう人が少なくありません。しかし、相続を巡る争いは、富裕層のものではありません。司法統計によると、遺産の分割について遺族間での話し合いがつかず家庭裁判所に持ち込まれる案件のうち、実に3/4が資産5千万円以下で、さらにその半数近くは1千万に満たないのです。逆に、資産5億以上の富裕層が占める割合は、1%未満。残念なことに、非富裕層にとってこそ、争続はとても身近な問題であるということが言えます。
 このようになってしまう原因は、士業の働きかけの偏りにあるのではないかと思います。元々富裕層の場合、弁護士や税理士との関わりが深く、相続についても十分な対策がとられているからです。また、非富裕層が支払える報酬額では彼らのビジネスの対象にならないという、シビアな現実もあると思います。
 当事務所はここに問題意識を感じています。そして、富裕層以外にとっても利用できるようなリーズナブルな法務サービスを提供していきたいと思っています。