自分自身、受験したときからどれほども経っている訳ではないので、こうして監督する側に回るというのは、感慨深いものがあります。もちろん、すぐに応募させていただきました。
行政書士試験に関しては前にも書いたことがあります。「『やり過ぎて損』なんてことは考えず、ガンガン勉強しよう! どうせ合格後も勉強しなきゃならないんだから」という趣旨でしたが、このときの考えは今も変わっていません。
試験の中心科目は行政法と民法ですが、これは広範すぎる行政書士という仕事を大きく2タイプに分ける基準とも言えます。行政書士の王道は許認可業務。これは行政法を中心にした仕事です。実際には、法律そのものというよりは、それをなり立たせている背景の事情への理解が重要と言えるでしょう。建設や産廃が認可制になっているのにはそうしなければならない社会的な理由があるわけですね。ただ、いくら王道とはいっても、役所や業界との接点が特にない人間には選びにくい選択肢です。そうなると、もう一方の区分=“民法型行政書士”が浮かびあがってきます。相続を専門にする事務所がその典型ですが、実際にはたくさんの類型が存在します。
それが行政法型にせよ民法型にせよ、行政書士には膨大な勉強が不可欠です。
行政書士には、前職を持つ人が少なくないのですが、前者の場合はまさにそういうキャリアが生かせる場面だと言えるでしょう。とはいえ、社会の要請というのは時代によってめまぐるしく変化するもの。行政法規は頻繁に更新されますし、膨大な量の“臨時措置”が、生まれてたり消えたりを繰り返しています。これにリアルタイムでついて行かなければならないのですから、勉強にもゴールはないのです。一方、後者の方は、法律家としての専門性を持たなければなりません。こういうものを扱う専門家は、第一義的には弁護士で、行政書士はどちらかというとニッチ狙い。ただ、行政書士用の民法が、弁護士用の民法と別にあるわけではありません。同じ法律の同じ概念と同じ判例を、同じように使えるようになっていないといけないのです。
私の場合、一応“本籍”は著作権法ということになりますが、実際には民法・商法を中心とした側だと言えるでしょう。「クリエイター支援」というテーマでは、契約や起業ということが、どうしても主要な領域になってきますから。そして、私の主要な顧客である個人クリエイターの契約相手方は、しばしば強面です。「出入り業者に得させたら、損」なんて思ってる会社もありますし、何人もの社内弁護士を抱えて日々目を光らせている会社もあります。
ということで、どちらの道に進むにしても、備えていなければならない知識量は、試験合格ラインのそれよりも格段に大きいのです。
そしてもう一つ、より“上”の試験を目指すという場合がありますね。
伊藤塾の祝勝会で知り合った“同期合格者”の中には、このまま司法予備試験にトライするという人が数多くいらっしゃいました。もちろんこれは茨の道でしょう。合格率から考えても、簡単にはいきません。でも、自分自身ができなかった挑戦をし続ける人というのは、やはり希望を託す相手です。今はもちろん、実際に合格されてからも、目一杯応援させていただきます。
ともあれ、行政書士試験への関わりは、1年という区切りを意識する上でも、重要なものだと感じています。そして、試験監督として参加することで、ともすればマンネリ化しがちなところ、真摯な受験者の皆さんからパワーがもらえるかもしれない、なんて思っています。とはいえ、「希望した全員が受任できる訳ではないよ」と、しっかり釘もさされていまして、まだできると決まったわけではないんですが。
2021年5月公開
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