ともあれ、この「『契約』なんて面倒なことを教える」取り組みは、ビジネス論という、4年生を対象にした科目の中で行っています。
この科目は、およそビジネスに関することなら何でも入れられる便利な袋のようなものです。かつてはビジネスマナー(名刺の渡し方とか話し方とか…なにげに面接練習も兼ねていたりしますね)やビジネスアプリの操作(つまりWordやExcelです)が扱われていました。こういうことを否定するつもりもないのですが、せっかくの「専門教育の最上級学年」でそんなことをしていたのでは、どうにももったいない感じがします(実は私自身あんまりできないというのもあります)。そこで、自分が担当するにあたり、学科の目的――4年課程というのは、建前上「将来、プロデューサーになる人を育てる」ということになっています――に根ざし、「プロデューサーや起業家のための基礎知識」という大テーマを掲げて、ゼロベースでの見直しを図ってみたのです。
現在、契約の他にも、会社法や知財法(ただし著作権法は3年でやっているので省略)、そして財務会計やファイナンスといったあたりを論じています。特に力を入れているのが財務会計です。まず財務三表をみっちりと教え、その上で、実際のIR資料を使って、企業の分析をしていくのです。ゲーム会社も多くの上場企業があるため、こういう資料には事欠かないのですね。ビジネスマン向け経済雑誌でもしょっちゅう入門特集が組まれていることから分かる通り、このあたりは大人のビジネスマンでも苦手意識を持っています。これができるというのは、社会に出ていく人間として、大きなアドバンテージを持つでしょう。まあ、自分の立場上、どうしても関心や知識量の偏りが激しくなり、法律分野の話に熱が入りがちですなのですが。
さて、肝心の成果ということですが、まあ、これが教育論が水掛け論になってしまう最大の理由で、果たしてあるのかないのか、はっきりしません。ただ、この形で始めて3年めですが、毎年3・4名ぐらいの学生は、目を輝かせて聞いてくれていますので、まるっきりのハズレということはないでしょう。おそらくその倍くらいの学生は、とりあえず考え方を頭に収めた状態で、卒業していることでしょうから。
(2021年公開)
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