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出前授業なんて呼びたくない!

 今月頭から始めていた、名古屋デザイン&テクノロジー専門学校様での「法律」特別講座が、23日をもってめでたく千秋楽を迎えました。3週にわたって展開した内容は、著作権契約税金&社会保険というもの。クリエイターの場合、会社員として就職する場合と、フリーランスとしてデビューを果たす場合とがあるわけですが、そのどちらの道に進んだとしても重要になる法律関係のトピックスについて、3回の授業で講じたわけです。

 たった3回?…そんな声も聞こえてきそうです。実際、法学部では一つの法律をまる1年(民法は契約の前に総則をやりますから、合計2年分ですね)かけて講義します。「90分の授業1回ずつなんて、聞く側だって何にも憶えられないから、やっても無駄じゃん!」なんて声も聞こえてきそうです。
 でも、そういうものでもないと思うのです。
 人は頭の中に「知らないけど、たぶんこうでしょ?」という形で、従うべきルールを持っています。ぼくはこれを「オレ法」と呼んでいるのですが、実は社会的な営みの大半は、このオレ法に従っていればうまくいきます。とはいえ全てではなく、そのままだととんでもない間違いを仕出かしたり、あるいは悪いやつに騙されたりする場合もあります。そこで、まずオレ法の存在(=実は法律ってある程度知ってるんだよ)に気づかせ、概念として抽象化した上で、法律で実際に使われる概念&用語とのすり合わせを行う…なんてことが、一般向け法教育のすべきことなのではないでしょうか。資格試験への合格みたいな具体的なゴールのあるものなら「最低でもn時間!」なんて学習必要時間も出てくるのでしょう。でも、このようなものなら、1週間なら1週間なりに、そして90分なら90なりにと、閾値なしの効果があると思っているのです。
 ただ、実定法を扱う以上、具体的な法知識というのも無視はできません。そうなると「最低限、これだけは伝えないと!」がつい出てきてしまって、膨らんでいくのを抑えるのに、かなり苦労するのですが。

 同業者(クリエイターも士業も)の中には、大勢の若い人の前に立つこと自体に怯んでしまったりする人もいるようです。ぼくの場合、長年専門学校で教員を務めてきたので、そういうことへの抵抗感はほとんどありません。ただ、学生の皆さんとの関係性を構築するという意味では、さすがに3回では難しいですね。「話す」→「聞く」の、単方向的な関係からなかなか抜け出せず、マシンガンのように話し続けた270分になってしまいました。また別の機会で、今度はもっと対話的に語れたらと、願う次第です。

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