では、ブラジル法ではどうなっているのかというと、「被相続人が住所を有した国の法律に拠る」となっています。結局ボールは日本に帰ってきたわけです。こういうのを「反致」といいます。
中国の場合も、これに近いものがあります。原則は本国法なのですが、渉外民事法律適用法というものがあって、法定相続については経常的居所地の法律に拠るとされているのです。また、不動産については、もともと所在地法に拠ることが決められているため、あわせて(事実上)反致されている状態です。
こういう国ばかりだと好都合なのですが、そうも行きません。例えば台湾や韓国は、本国法主義です。ただ、韓国の場合、遺言で準拠法を指定できるため、被相続人は日本法に基づいた相続をあらかじめ選んでおくこともできます(となると、後から遺言状が出てきたりしたら、大騒動になりそうですね)。
一方、同じ在日コリアンでも、朝鮮籍の方はどう扱われているのでしょうか。ざっと調べてみても、よくわかりませんでした。
国籍としてみた場合の朝鮮は、現在平壌に政府を置く国を意味しているわけではありません。戦前から日本に居住しているコリアンの中で、韓国国籍も日本国籍も取得しなかった人およびその子孫、という意味なのです。なので、無国籍と扱われ、在地法として日本法を適用するということになるのでしょうか。「日本政府が認めようが認めまいが、俺は朝鮮民主主義共和国の国民だ!」というアイデンティティの人はどうなるかというと、同国の法を引用すると、住居地主義になっているため、仮にこの法律を「外国法」と認めた上で適用すれば、反致によって日本法が準拠法となります。なので、実務的には、あえてどちらに準拠しているのかはあいまいなまま、日本法の規定でやっているのではないでしょうか。
他、属しているエスニックグループで準拠法が変わるなんて国もあります。フィリピンやインドネシアなど、イスラム教徒とそれ以外で違っていたりするのです。(続く)