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週刊文春、ブラボー!(1)

 週刊誌というのが長年嫌いでした。品格の低さに嫌悪感を感じていたからです。それらの基本は、暴露や覗き見。好奇心という人間を成長させる原動力を最もくだらない用途に使っているのだといえるでしょう。そして記事以上に許せないのが見出し。記事の方は本体読まなければ関係ありませんが、見出しについては中吊りや新聞広告で見せつけられるため、逃げ場がありません。
「わが子をレンジグルメ、この馬鹿っ母!」
 なんてのは、すごく高度な短文創造能力を最低の用途に使っているわけで、まあ書いてるやつに向かって“この馬鹿っ記者め!”と言いかえしてやりたかったのです。
 ところが最近、週刊文春を愛読しています。
 読んでいるのは、楽天マガジンのサブスク版です。朝食の前に楽天マガジンをチェック&ダウンロード、通勤途上で雑誌を読むというのが日課ですが、こと週刊文春の場合はそのまま読み始めてしまうことが多くなっています。
 読み始めたきっかけはブックガイドでした。かつては立花隆氏も書いていた(ただし立花さんの回はデジタル版非掲載)コーナーで、本の紹介としては抜きん出て秀逸だったのですね。それが、回を重ねるごとにだんだん読む記事が増えていきました。今では、大半の連載記事を読んでいます。特に珠玉と呼べるのが、1ページ程度のエッセイ。みうらじゅん、宮藤官九郎、林真理子といった諸先生が書いているのですが、ユーモアやエスプリに富み、また時代も映している名作揃いです。一方、マンガも充実しています。朝日新聞のイラストエッセイでもおなじみの益田ミリさん・伊藤理佐さんがそろって連載をもっていますし、長編マンガの連載も魅力です。今連載されているのは司馬遼太郎原作の「竜馬がゆく」。竜馬好きではないぼくから見ても、同じ原作のビジュアル化されたものとしては最高の水準だと思います(まだ千葉道場に通っているところ。できればずっと続いてほしい…)。さらに、エッセイの挿絵。なんとあのヨシタケシンスケ氏が描いているのです。エッセイ内容に連動する山藤章二スタイルなんですが、本体よりも格段に面白いものになっています(というかエッセイ本体の方はほとんど読んでいません。こちらが打ち切られても、挿絵の方は存続させて欲しいと願う次第)。
 実のところ、拒絶していたのは典型的な食わず嫌い。週刊誌の中には唾棄すべきものがあったとはいえ、媒体全体としてみた場合、きちんとリスペクトすべきものはあったのです。
 週刊文春の場合、サブスク版は、紙版と同じ日に出ます。ただ内容は大きく割愛されたもの。新聞広告や中吊りで極太の文字で書かれるスクープ記事が、ばっさりカットされているのです。会社としては「ここ読みたかったら、ちゃんと買ってね」ということなのでしょう。ただ、ぼくのような読者にとって、これはむしろ大サービス。嫌いな部分を見ずに済むのですから。まあ、文春砲にさらされるような有名人ではありませんので、これで問題ないかと。

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