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3月15日に生まれて

 1年は365日しかないので、ほぼ毎日が何らかの記念日です。他愛のないものが大半ですが、コラムの書き出しやトークの話し始めなどに使えるので、一応便利と言えるでしょう。最近乗り出したクルマのカーナビは「今日はなんちゃら記念日です」なんて、一日の最初に言ってきたりします。出勤のときにこれを聞けば、部下への訓示にも困らないってなもんですね(でもショーファーで出勤する偉い人の場合、運転手さんが聞いてしまうわけですが)。
 そんなわけで、毎日がなにかの日。その中にあって3月15日というのは、多くの事業主にとって特別な日でしょう。そう、確定申告の締め切りなのです。
 今年も無事、確定申告を終えることができました。提出日時は、実に3月14日の午後23時40分。自分史上、最も遅い提出日となってしまいました。今年は個人的にいろいろあって(膝ねじ曲げたりクルマぶつけたり)、2月前半という期間が人生から切り取られたようになってしまい、スタートが遅れてしまったのです。停滞していた仕事を片付けているうちに3月となってしまい、あれよあれよという間に締め切り週になってしまいました。本当にeTax様々です。
 実のところ、確定申告自体はそんなに手間のかかる難しいものではありません。実際に頭を悩ませられるのは、帳簿の完成と決算です。ただ帳簿といっても、小売業をしているわけではないため、仕入れや買い掛けなど面倒なことがありません。また実質開業初年度ではインカムも全然たいしたことなくて、シンプルなものです(この点はぜひ改善していきたいところですが)。そもそも苦労させられる原因は、書き方というよりは思想の部分。「税務署はいったいここに何を書かせたいんだ?」というのがわからず、疑心暗鬼に囚われながら進めることになるからです。30代の前半で会社を辞めて以来、断続的にとりくんできたのですが、それら知的格闘を通じて会計の概念が理解できたと思いますし、それは後に財務の勉強をするときに役立ちました。ときどき「帳簿付けるためには、簿記の資格とった方がいいんでしょうか?」なんて聞かれますが、これはむしろ逆かも。帳簿で使う用語は実践経験で理解していく方が賢いように思えます。そうやって得た知識は、資格試験の勉強に生き生きと役立つことでしょう。「簿記の資格取りたいんだったら、起業してみるといいよ」これがお返しのメッセージです。
 さてこの3月15日、少なからぬフリーランスにとって、独立記念日になるかもしれません。事業主の誰もが「人生初の確定申告」を迎えた日があります。ぼく自身は、最初に会社をやめてフリーのクリエイターとなった年が、それに相当しました。それこそ鬼ヶ島に乗り込むような気持ちで東京の荻窪税務署に行ったのですが、そのままあっさりと収受印押されて終わってしまって、拍子抜けしたのをおぼえています。ただ、あの時の緊張感みたいなものは、忘れてはいけないのと思うのです。
 というわけで、3月15日は独立記念日。これを言いたくて選んだタイトルで、別にぼくの誕生日ではありません。おあとがよろしいようで。

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