そもそも行政書士って何?
看板はちょくちょく見かけるけど……
街の看板でよく見かけるこの名称ですが、「なんだかわかんない」という人が少なくないでしょう。その一方で、先述のようなドラマもあり、またその原作であるマンガも長期連載されているため、知っている人は現実とは関係なく知っているという、ちょっと困った状態になっています。
そんな中、一般に思い描かれるイメージを平均すれば、こんなところになるのではないでしょうか。
弁護士とくればS級エリート専門職。能力も高いだろうけど、プライドも高ければ値段も高い、なんかお手頃なのないのかねえ……で選ばれるといったところでしょうか。一応“それは誤解です”と言っておきますが、そもそも日本行政書士連合会が自ら掲げているキャッチフレーズが「頼れる街の法律家」なので、このあたり狙っている感じもしますね。
国家資格に基づく法律系専門職を、まとめて「士業」《しぎょう》と呼びます。行政書士も士業の一つで「書類の作成&関連する業務」が専門です。官公署に提出する書類や私人間の権利関係・事実関係に関する書類を作ったり、役所への申請を代理したり、それらのための相談にのったりするわけです。
行政書士には各自の得意分野がある
行政サービスは、社会生活の隅々をカバーしています。そのため行政庁と一口に言っても、実にたくさんの機関があります。そのほとんどに関係することから、行政書士はとても幅の広い資格です。あまりに広すぎるので、多くの人は自分の得意分野を中心に業務を持っています。
まず多いのが、許認可関係。建設、廃棄物処理、風俗営業など、官公庁の許認可を必要とする申請の場合、ほぼ種類ごとに専門家がいる状態です。入国管理や自動車関係も、この例といえます。
次に、相続や離婚あるいは開業支援など、テーマ別の専門領域。許認可関係は、役所ごとのいわば“縦割り”区分ですが、こちらは“横割り”といえるでしょう。また横割りテーマを複数組み合わせれば、「家庭用法務サービス」となります(ホームの法務ですね)。住宅街やその隣接商店街にあるような地域密着型の事務所は、これに該当することが多いと思います。
クリフェの得意分野は、言うまでもなく知的財産権です。行政庁への書類提出の代理については、著作権登録があります。また、契約書その他権利関係書類の作成についても、対応します。知財業務一般は特許庁が管轄していて、そちらへの申請は弁理士の仕事。でも著作権だけは所管官庁が文化庁となっていて、行政書士の仕事なのです。
報酬の意味
行政書士の報酬は、基本的に文書作成に対して発生します。といっても、単なる「清書代」ではありません。
「書類作って出す」というのは、実はかなり奥行きのある仕事です。許認可関係の書類では、書き方自体が問題なのではありません。廃棄物処理にしても風俗営業にしても、実際に重要なのは申請書に書いてある中身のほうなのです。法や規則の条文だけからは読み取れない行政の要求事項を理解し、顧客に対して的確に伝え、必要な要件に導く、それが許認可業務における行政書士の仕事です。また、相続専門の行政書士が最終的に作成するのは遺産分割協議書ですが、それに先立つ膨大な作業にこそ仕事が詰まっています。故人の戸籍を出生まで集めて推定相続人を洗い出したり、相続情報図を書いて法定証明を受けたりと、テーマにおいて必要になる多岐にわたる業務をこなすのです。
私人間の権利関係うんぬんというのは、例えば契約書が典型例ですが、これも決して単純な仕事ではありません。契約は双方の合意によって成立しますが、そこには無数の選択肢が存在します。世間には、契約書のひな型がたくさん存在しています。しかし、実際に盛り込むべき内容には、とても対応できません。アパートの賃貸契約のような定型的なものでさえ、退去時の義務を巡って争いが絶えないほどです。当事者の思いを一つずつ掘り起こし、権利と義務という形で文書化するのが、この仕事なのです。
クリフェの場合、「クリエイティブ産業をよく知っている」というアドバンテージがあります。依頼する側とされる側の両方の視点を持ち、広い視野からのベストを探れるということです。報酬額には、こうした無形の価値が含まれているものとご理解ください。
司法書士とは違うんですか?
同じ「書士」の名がついていることから紛らわしいのですが、相手にする役所という点で大きく違っています。それぞれの名前が示しているように、行政書士は行政庁一般が相手ですが、司法書士の相手は「司法」。裁判所と法務省(法務局や検察庁)が対象になっているのです。
司法書士の仕事をより具体的に言えば、裁判や強制執行に関する書類、そして登記関係になります。市民生活的に重要なのは後者で、例えば土地や建物を売り買いするとか、会社を設立するとかいった登記が必要となる場面において、司法書士は大きな役割を果たします。
これらの仕事は司法書士の独占業務なので、行政書士にはできません。起業の支援は仕事にしますが、そこには「設立登記」は含まれていないのです。
なお、司法書士は、少額訴訟の代理人になることができます。ようするに弁護士の代わりですね。よく見る「借金の過払い金、取り返します!」の広告で、弁護士法人だけではなく司法書士法人も混じっているのは、これがあるからです。