みんなの著作権 第3部 判例ガイド 著作物に関する判例
「ポパイ」ネクタイ事件
1992.7/17 最高裁H4(オ)1443号
米国の連載漫画「ポパイ」について著作権を有する会社が、連載第1回でのポパイの絵を柄としてあしらったネクタイを販売していたY社に対し、著作権侵害であるとして、差止等を訴えた事件。
ポパイは、1927年に新聞の連載漫画として発表、以後断続的に媒体での連載が現在に至るまで続いている。ただ描き手はまちまちであり、「水兵服を着ている」「パイプをくわえている」「前腕が太く、片目を閉じている」などの特徴は引き継いでいるものの、絵柄も大きく変遷している。被告は、元の絵は初期のものなので、戦時加算を考慮しても既に著作権が切れていると主張。これに対し原告は、連載漫画は「逐次公表して完成する著作物」であるとし、著作権が有効であることを主張した。
二審では原告の主張が認められたが、最高裁はこれを認めず、最初の連載が終了した時点を公表時として著作権の消滅を認定、原告の訴えを退けた。
キューピー著作権事件
2001.5/30 東京高裁H10(ヮ)16389号
(原審・東京地裁H11(ネ)6345号 H10(ヮ)13236号)
東京高裁H12(ネ)7号
(原審・東京地裁H10(ヮ)2533号)
キューピー人形について、元になったイラストおよび人形の著作者から著作権の譲渡を受けたと称するX氏が、無断使用であるとして、キューピーを会社のマスコットとして永らく使用していた日本興業銀行(現みずほ銀行)ならびにマヨネーズ大手のキユーピー株式会社に対して、イラスト・人形等の不使用と損害賠償を求めた事件(訴訟は別個だが同日に同じ法廷で判決)。キューピーの原型は、米国人イラストレーターが1903年に描いたイラストであり、これを商品化する形で1912年に人形が試作され、翌年生産が開始された。ただ、当時は著作権法も関連条約も過渡期で、戦時加算も加わるため、保護期間の解釈の幅が広い。被告がキューピーを広く使用していた事実は確認されたものの、著作性や保護期間の有無から原告適格に至るまで、多面的に争われた。
一審では、類似性が否定され、原告敗訴。二審裁判所は、原型イラストに対しては翻案であることを認定したものの保護期間の終了を認定、またそれを元に作られた二次著作物については、そこで付け加えられた独自の創作性までは翻案していないとして、理由は異なるものの原告敗訴の判決となった。
「キャンディ・キャンディ」事件
2001.10/25 最高裁H12(受)798号
(原審・東京高裁H11(ネ)1602号)
漫画作品『キャンディ・キャンディ』の原作者である作家水木杏子が、同作品の主人公などを描いたキャラクター画が自己に無断で広告などに使用されたことに対して、単独で許諾を行っていた作画担当の漫画家いがらしゆみこと広告会社に対し、使用差止等を求めた事件。同作品は、70年代後半に少女漫画雑誌『なかよし』で連載、並行してテレビアニメも制作・放映された当時の人気作であったが、その後原作者と作画者の対立が表面化、後者が前者の承諾のないまま商品化許諾を強行する事態になっていた。
一審・二審ともに、「原作付きの漫画作品における絵は、原作に対する二次的著作物であり、原作者は原著作者としてキャラクター画に対しても著作権を主張できる」という原告の主張を認め、出版等の差止を認める判決となった。最高裁でもこの判決が維持され、上告棄却となった。
「ファイヤーエムブレム」事件
2004.11/24 東京高裁H14(ネ)6311号
(原審・東京地裁H13(ヮ)15594号)
ゲームソフト『ファイヤーエムブレム』(以下FE)の開発元である任天堂が、『ティアリング・サーガ』(以下TS)を制作したY氏およびその会社と、エンターブレインに対して、翻案権の侵害または不正競争防止法違反を理由とする販売等の差止と損害賠償の支払いを求めた事件。
Y氏は任天堂関連会社の元社員で、在職中にFE第1作ないし第2作を手がけたゲームクリエイター。TSは、退職後に設立した会社において、エンターブレインとの協力関係で制作したものであるが、当初は『エムブレム・サーガ』の名称で、『ファミ通』などによって“これが本当の続編”と銘打ってPRされていた。任天堂は、この事実およびゲーム内容と名称の類似を指摘、「TSはFEを翻案して作ったゲームソフトであり、一般消費者に続編であると誤認させる目的で名称やPR方法も含め類似させている」と主張した。
一審では「翻案したものではない」「名称はありふれたもので、特段のユニークさはない」として、原告の全面敗訴。これに対し二審ではタイトルの類似性(特に、エンブレムではなくエムブレムとしている点など)を元に不法競争防止法違反を認定、ライセンス料相当額などとして、約7600万円の損害賠償を命じる判決が出された。