みんなの著作権 第3部 判例ガイド 映画の著作物
「パックマン」事件
1984.9/28 東京地裁 S56年(ワ)8371号
アーケードゲーム「パックマン」の製作元である株式会社ナムコ(当時)が、無断コピー基板の載ったゲーム筐体を設置していた喫茶店などに対し、損害賠償を求めた事件。原告は、ゲームソフトを「映画の著作物」であるとした上で、上映権の侵害を理由に訴えを展開した。これは、複製を行った業者ではなく設置した店舗を直接相手にすることができ、またデッドコピー以外の方法で行われた模造品も射程に収めたことになる。
裁判所は原告の主張を認め、被告らに対し100~200万円程度の損害賠償を命じる判決を出した。
「スウィートホーム」事件
1998.7/13 東京高裁 H7(ネ)3529号
(原審・東京地裁 H7(ヮ)5194号)
映画監督黒沢清が、自身が監督と脚本を手掛けた映画「スウィートホーム」のビデオグラム版等の取り扱いについて、製作会社である伊丹プロを、著作権・著作者人格権の侵害で訴えた事件。
本件の契約は口頭で行われ、監督料・脚本料と興行収入に応じて支払われるプロフィット率については合意されたものの、二次使用については特段の定めがなかった。撮影終了後、監督料・脚本料が支払われたが、劇場公開後に行われたビデオ版の発売やテレビ放映について、追加報酬の支払いはなかった。
双方とも「特段の取り決めがない以上、慣行に従うべき」としたが、その慣行の内容が真逆であり、原告は職能団体が定める一定の計算式に従った追加報酬の支払いを、被告は報酬が映画本体の報酬に含まれることを、それぞれ主張、争った。
裁判所は、被告の主張する業界慣習を認定、原告の訴えを退けた。
「三國志」事件
1999.3/18 東京高裁 H7(ネ)3344号
(一審・東京地裁 H5(ワ)13071号)
シミュレーションゲーム『三國志III』の発売元であるコーエーが、書籍「三國志III非公式ガイドブック」を発行したY社に対して、著作者人格権などに基づく差止などを請求した事件。原告は、同書籍に附属していたフロッピーディスクにあった武将データを書き換えられるプログラムが、翻案権と同一性保持権を侵害するものであると主張した。データの書き換えがプログラムの改変に相当し、またゲームソフトが「映画の著作物」に該当するという前提に立った上で、ストーリーの展開が変えられてしまうことを、同一性保持権侵害であると主張した。
一審では、別ファイルに収められた武将データの書き換えはプログラムの改変にはあたらず、また静止画で構成されているため映画の著作物とはいえないためストーリー展開の改変という主張もできないとされ、訴えは認められなかった。二審でも一審の判決が維持され、原告の全面敗訴となった。
「ときめきメモリアル」無断改変事件
2001.2/13 最高裁 H11(受)955号
(原審・大阪高裁 H9(ネ)3587号)
コナミが、「ときめきメモリアル」のチートデータの入ったメモリーカードを販売したY社に対して、著作者人格権(同一性保持権)侵害を主張し訴えた裁判の上告審。原審では、コナミが原告、Y社が被告となるため、以下そのように表記する。
「ときめきメモリアル」は恋愛をテーマにしたシミュレーションゲームである。主人公(マイキャラ)の各種パラメータによって、特定のヒロインから愛の告白を受けられるなど物語進行が変わるため、プレイヤーは、ターンごとのコマンド選択を通じてパラメータの向上を図っていくことで、意中のヒロインキャラの告白を目指すというプレイが想定されている。
原告は同ゲームを「映画の著作物」とした上で、被告メモリーカードについて「その使用はシナリオを書き換える行為であり、そのような装置の販売は同一性保持権の侵害である」と主張した。これに対し被告は、「ゲームソフト自体には何ら書き換え等を行っていない」「上記行為の主体はユーザーであり、自分たちではない」旨を主張、争った。
一審の大阪地裁では被告の勝訴となったが、二審で逆転、原告の主張する著作者人格権の侵害が認められ、被告側が上告した。最高裁は原審の結論を支持(『動く影像』が多数含まれることを、映画であることの根拠に挙げる)、他人の使用による同一性保持権侵害を惹起したことに不法行為責任があるとして、損害賠償を命じる判決を下した。
中古ゲームソフト事件
2002.4/25 最高裁 H13(受)952号
(原審・大阪高裁 H11(ネ)3484号)
カプコン・コナミ・スクウェアなど、大手ゲームソフト会社6社が、ゲームソフトの中古販売事業を営むY社に対し、頒布権にもとづいて中古販売の差止を求めた事件。原告は「ゲームは『映画の著作物』に該当するので、消尽なしの頒布権がある」という前提で、自社ソフトの中古販売の差止を求める訴えを、大阪地裁に起こしていた。
一審では原告の主張が認められたが、二審では、ゲームが映画の著作物であることは認められたものの、消尽なしの頒布権が映画の著作物一般に適用されるものではないとし、ゲームについては一般家庭に向けて大量生産される点からこれを否定して、原告の訴えを認めなかった。一方、別途東京地裁・東京高裁で行われていた逆向きの同種事件(中古販売業者が原告)では、映画の著作物全体に頒布権を認めた上で、ゲームがそれに該当することを否定する判決が出されていたため、最高裁での結論が注目された。
最高裁は、ゲームが映画の著作物であることを認めた上で、「権利消尽は知的財産権の一般則で、何が除外されるかは解釈に委ねられている」として二審判決を支持、上告を棄却した。