みんなの著作権―オンライン専用版―
第3部 判例ガイド
公衆送信権

みんなの著作権 第3部 判例ガイド 公衆送信権

「MYUTA」事件

 2007.5/25 東京地裁H18(ワ)10166号
 ストレージサービスMYUTAを運営するX社が、日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し、MYUTAを差し止める請求権を有しないことの確認を求めて訴えた事件。
 MYUTAは、ユーザーが自分の持つCDなどをアップロードしておき、いつでも必要な曲だけダウンロードして携帯デバイス等で聴くことができるという、ストレージサービスである。独自のファイル形式で保存、またサーバーへのアクセスも、ユーザー管理がされた専用アプリを使って行うものとなっている。原告は「アップロードするのはユーザーであるから、複製行為の主体もまたユーザーであり、運営会社ではない」と主張した。
 裁判所は、サーバーや専用アプリなどを設置し利益帰属の主体でもあることから、いわゆる“カラオケ法理”を適用、複製行為の主体は運営者であるとして、訴えを退けた。

「まねきTV」事件

 2011.1/18 最高裁H21(受)653号
      (一審・東京地裁H19(ヮ)5765号、
       二審・知財高裁H20(ネ)10059号)
 NHKと在京民放5社が、有料サービス「まねきTV」は著作権法に違反するとして、運営会社にサービスの停止と計約1,000万円の損害賠償を求めた事件の上告審。
 このサービスは、インターネットを通じて日本のテレビ番組を海外で視聴できるようにするもの。使用する機材はソニー製の市販装置「ロケーションフリー」(ロケフリ)で、運営会社は顧客が購入したロケフリ/ベースステーションを国内で預かり、アンテナとネット回線につないだ状態で設置するだけ。番組視聴自体は、顧客が手元の設定済み端末で見たい番組を選んで行うことになる。このとき、ベースステーションで受信したテレビ放送がデータ化されてネットを通じて転送されることから、原告は公衆送信権の侵害を主張していた。
 一審・二審とも、ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能しか有しておらず、「公衆」に対する送信ではないので運営会社は公衆送信行為を行っておらず、また、入力の主体は顧客であるとし、訴えを退けた。
 最高裁第三小法廷は、装置が1対1の送信を行う機能しか有していないにしても、顧客からのリクエストを受けてネットを通じて自動的に送信する機能を持つ装置は自動公衆送信装置に当たり、また、送信の主体も、装置に放送された映像信号を入力している者=運営会社であって、原審の判断には判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとして、原判決を破棄、事件を知財高裁に差し戻した。

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